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2020年度の神奈川県入試(全日制)の傾向と今年度の神奈川全県模試について

 2月14日に実施された神奈川県公立高校の共通選抜(全日制)は、マークシート解答形式が導入されて4回目の入試となりました。昨年と比較して、設問数や解答形式ごとの配点に大きな変化はありませんでしたが、教科ごとの難度には大きな変化が見られ、全体としては大幅に易化しました。神奈川県が発表する合格者平均点(例年3月公表)は、昨年の5教科合計で263.0点でした。今年はこれよりも、25~30点程度上昇する見込みです(2月25日現在)。昨年3月の県教育委員会で、数学での正答率の低い問題の多さ、理科の平均点の高さ、社会の平均点の低さなどが、問題点として指摘されていました。今回の難度の変更は、この点を反映したものといえます。

 一方で、入試制度が大きく変更された2013年度から続く「思考力・判断力・表現力」を問う設問は引き続き出題されていました。与えられた資料などをきちんと読み取って「思考」し、基礎・基本となる「知識」を活用しながら「判断」して、自分の考えを解答として「表現」する力が、今までと同様に求められました。これらの力は、与えられた課題に対する「問題解決能力」であり、読み取った複数の情報を整理して分類し、知識を活用して正しい判断を下すことができる力を問うているといえます。

 以下に、今年度の入試について、昨年度からの変化を中心に記載いたします。是非、参考にしてください。

《英語》

 問題構成は昨年と同様でしたが、読解問題の総語数は昨年より100語以上増えて、1875語になりました。問1〔リスニング〕は放送スピードが前年よりも遅くなって聞き取りやすくなりましたが、(ア)№3では聞き取った内容から場面を想像する力が、(ウ)№1では内容を理解して言い換える力が問われ、難度が高くなりました。問2〔語彙〕の(イ)は文脈と前後の文からstrongestを書く問題で、単なる語彙知識ではない難しさがありました。問3〔適語選択〕の(イ)は助動詞を含む受動態の疑問文を完成させる問題で、助動詞→動詞の原形、受動態→過去分詞という変形に加えて、文頭のCanと動詞が離れているため、正解が選びにくくなっていました。問4〔語順整序〕の(ウ)は現在完了と不定詞構文が複合した問題で、文構造の正しい理解が求められる難度の高い出題でした。問5〔条件英作文〕は中学2年までの知識で作ることができますが、指定語句、語数、後続の文などの条件により難度が高くなっていました。とくに「~listen to(when~)」の「to」の書き忘れに注意が必要でした。問6〔スピーチ文読解〕の総語数は、昨年とほぼ同じ約640語でした。話題のプラスチックごみを題材とした、取り組みやすい内容でした。問7〔資料と対話文読解〕の(ア)は従来の英文形式から変更があり、根拠を探すのに手間がかかる、難しい問題になりました。問8〔対話文読解〕は総語数が昨年よりもやや増え、866語になりました。登場人物の一人ひとりの主張を照合しながら、時間内に選択肢を精査する力が必要であり、難度は高い問題です。とくに(ウ)は、6つから7つに増えた選択肢が、複数の主語・動詞を組み合わせたものになっており、長い構文を正しく理解する力が求められました。

 全体の難度は昨年並みですが、英語が得意な人にはやや得点しづらく、苦手な人には少し得点しやすくなりました。

《数学》

 大設問が問6までになり、昨年より1問減りました。これに伴い、配点や問題の配置にも変化が見られました。問1〔計算〕と問2〔各単元からの小問集合〕は計11題で昨年と同数でしたが、問2の配点が21点から24点(4点×6題)に増え、難度も少し上がりました。(ア)で連立方程式の応用が、(カ)で円と角が出題されたのはトピックといえます。問3の(ア)で出題された平面図形の証明問題は、昨年まで問7として出題されていたもので、完答形式から単問形式になって配点も増えました。(ⅱ)では昨年の新出だった指定条件を満たす場合を考える問題が再び出題され、難度が高かった相似や三平方の定理を駆使して線分の長さを求める出題ではなくなり、取り組みやすくなりました。(イ)では、中学1年で学習する資料の整理から、適性なヒストグラムを選ぶ出題がありました。目新しいもので、情報の処理に時間を要する出題でした。(ウ)の平面図形は昨年ほどの難度の高さはなく、努力の報われる(差のつく)問題になりました。(エ)は中学1年で学習する反比例からの出題で、中学校の定期テストでは頻出の問題でした。問4の(ア)と(イ)は典型的な関数の問題で、(ウ)の三角形と四角形の面積比の出題も、時間をかければ実際の面積が算出でき、全体に易しくなったといえます。問5は確率からの出題として典型的なものでした。ただし、空間図形の辺の長さを確認したり、条件を吟味したりする必要があるため、短時間で理解して作業を進める力が求められました。問6〔立体図形〕の(ア)と(イ)は、三角錐に関する典型的な出題でした。しかし、三角錐の表面を通る線の最短の長さを求める(ウ)は、補助線を引いて相似な三角形をつくり、三平方の定理を用いて長さを求めるという、難度の高い出題でした。

 全体に易しくなりました。とくに、数学を得意とする人ほど、昨年よりも得点しやすかったのではないでしょうか。

《国語》

 問題構成は昨年と同様でしたが、全体の文章量は昨年より600字ほど増えて、約8300字になりました。問一〔漢字・助詞・韻文〕の漢字では、(ア)の「綻び」や(イ)の「緩急」と「妥協」などが、中学生の使う語彙としては難度が高く、字句の意味を考えて練習する習慣や文脈(例文)上の使い方に注意する必要がありました。(ウ)の助詞「が」の識別は頻出の学習項目で、(エ)の短歌の読解も典型的な出題でした。問二〔古文〕は、難解な古語もなく、二人の登場人物のせりふや行動もとらえやすいため、あらすじが把握しやすかったです。(イ)にはやや紛らわしい選択肢があるものの、いずれの小設問も取り組みやすいものでした。問三〔小説文〕では、(エ)の登場人物「長門」の心理を読み取る問題がやや難度が高いのを除けば、他の小設問は例年と変わらない難度でした。問四〔論説文〕は、文章のテーマや語彙が抽象的で、中学生にとって内容を的確にとらえるのが難しい文章でした。ただし、選択肢の正誤を判断する根拠が、文章中から明確に見つけられるため、いずれの小設問も取り組みやすくなっていました。問五〔資料と対話文の読解と記述〕も例年どおりの出題でした。資料を読み取って記述する(イ)は、書き出しや文末、2つの指定語句、文字数、資料から読み取った「具体的な内容」に触れるという、多くの条件を同時に満たすことが必要になりますが、かえってそれらがヒントとなり、解答づくりの手助けになっていました。

 昨年は大幅に難化した国語ですが、今年は得意・不得意にかかわらず、大きく平均点が上がりそうです。

《理科》

 分野別の問題の配列やそれぞれの配点など、問題構成は例年どおりでした。記述解答形式とマークシート解答形式(記号選択形式)の配点も昨年と同じでしたが、2つの解答の組み合わせを選択する出題が、昨年の2題から7題に増えました。問1〔物理分野・小問集合〕の(ウ)は、異なる3本のばねののびを比較する問題でした。グラフの必要な箇所にしるしを付けたり、計算したりする、作業と計算の力が求められる問題でした。問3〔生物分野・小問集合〕の(ア)は、オランダイチゴの細胞中の染色体について、正しい説明を選ぶ問題でした。聞きなれない植物ですが、生殖における染色体の受け継がれ方という原理原則を問う出題でした。また(ウ)はマツの雄花と雌花の位置を問うもので、比較的細かな知識が必要とされました。問4〔地学分野・小問集合〕の(ア)では温帯低気圧の断面の様子を選ぶ基本的な問題でしたが、(ウ)の海洋プレートの動きに関する問題では、地質年代と地球上のできごとを結びつける正確な知識を必要としました。問5〔物理分野・音の性質〕では、他の都道府県でも出題実績のほとんどない音の性質が、神奈川県では初めて出題されました。問6〔化学分野・電気分解〕や問7〔生物分野・刺激と反応〕も、一般ではあまり出題されることのない単元でした。問8〔地学分野・星の運動・太陽系〕の(イ)はさそり座の見え方(見える時期)を問うもので、これまであまり問われてこなかった細かな知識を必要としました。また、これまで問5~問8(分野別)では、同じ学年で学習する単元は、次の年に出題されることがありませんでした。しかし、今年は問5(中学1年/昨年は水圧・浮力・密度)、問7(中学2年/昨年は消化と吸収)、問8(中学3年/太陽の日周運動・地球の地軸の傾き)の3題が、昨年と同学年の単元から出題されました。これまでの出題の周期や、他の都道府県での出題状況にとらわれなくなっているのです。

 昨年は大幅に易しくなった理科ですが、今年は得意・不得意にかかわらず、平均点が少し下がりそうです。しかし、全国でも屈指の高難度だった2014年・2015年はもちろんのこと、2016~2018年ほどの難しさはありません。

《社会》

 長らく大設問が6問で構成されてきましたが、今年は地・歴・公民の融合題として問7が新設されました。また、問5と問6の分野が入れ替わるなど、5教科の中では最も見えやすく変化しました。問1〔世界地理〕の(ア)は中学1年で学習する地図(正距方位図法)の性質に関する出題でした。入試でもよく見る地図ですが、その性質を正しく理解していないと間違える問題でした。(イ)は表の読み取りやグラフの性質(活用法)に関する出題です。表との照合が面倒ですが、これといった社会科的知識を必要としない問題で、昨年までの同種の出題に比べて格段に易しくなりました。(ウ)は地図中の指定の地点の様子を選ぶもので、紛らわしい選択肢がなく、取り組みやすくなっていました。問2〔日本地理〕の(ア)はカタカナ7字指定で「フォッサマグナ」を解答する問題です。知ってさえいれば難なく正解できます。(イ)の雨温図に関する問題は、例年は問1で出題されていましたが、今年は日本のものが出ました。日本海側の気候なので選びやすかったでしょう。(エ)は、デフォルメされた案内図と実際の地形図を比較して読み取る、目新しい問題でした。これまでの地形図の出題で必要とされた、縮尺、等高線、地図記号などの知識はほとんど必要ないのですが、方向感覚を間違えると、正解できない問題でした。問3〔全近代史〕の(ア)は、中学1年で学習する「世紀」の範囲を答える問題でした。基礎的な問題ですが、正しく理解していないと間違えます。(ウ)は歴史的できごとを正しく並べ替える問題です。できごとの時代が特定しやすく、昨年までの同種の出題に比べて易しくなっていました。(エ)は、史料(南蛮図屏風)を見て、正しい説明と同時期の世界のできごとを選ぶ問題です。紛らわしい選択肢がなく、昨年までの同種の出題に比べて易しくなりました。問4〔近現代史〕の(ア)は歴史上のできごとを並べ替える問題です。選択肢が「条約」に絡めてあるために紛らわしく、例年と同様の難度がありました。問5〔経済〕では、インターネットの利点と欠点を選ぶ(ア)、医療費の負担と社会保障を結びつける(イ)、一般銀行や日銀の役割を答える(エ)、価格や景気の変動について正しい説明を選ぶ(オ)など、基本的な知識を問う出題が目立ちました。資料の正しい読み取りを選ぶ(ウ)も、とくに社会科的知識を必要としない問題ですが、実数と割合の見分けがつかないとミスする問題でした。問6〔政治〕でも、人権に関する正しい説明を選ぶ(ア)、行政のしくみを問う(イ)などは基本的な知識を問う問題でした。一方(ウ)では、国家の「主権」を記述する(ⅰ)、国際貢献に関する正しい説明を選ぶ(ⅱ)など、知識の盲点が出題されました。新設の問7は、融合問題らしくニューヨーク旅行のメモの体裁をとっていましたが、個々の出題は、時差、国連の権限と宣言、アメリカ合衆国の歴史など、いずれかの分野に分類でき、かつ難問ではありませんでした。

 問題文だけでなく複数の資料を読み取りながら解答するスタイルに大きな変更はなかったが、選択肢の紛らわしさが大きく緩和され、知識を深く理解して変換する必要が小さくなりました。そのため、5教科の中では、昨年に比べて最も平均点が上がりました。

《特色検査/筆記型の自己表現検査》

 今年は、県内の18校で筆記型の自己表現検査が実施されました。このうち、県立の「学力向上進学重点校」とその「エントリー校」の17校は、今年から全校で共通問題および共通選択問題を用いることになりました。全校共通の問1・問2に加えて、学校ごとに2問を共通選択問題の中から選ぶというやり方に変化はありませんでしたが、共通選択問題が4問から5問(問3~問7)に増えました。新たに追加されたのは、漫画「コボちゃん」を用いた出題が特徴的な問4と思われます。問4は、昨年まで作文による独自の特色検査を実施していた横浜緑ヶ丘高校や、新規の実施校である川和高校、光陵高校、多摩高校の4校で採択されており、湘南高校や翠嵐高校など、既存の実施校(7校)では採択されていません。

 共通問題の問1は、英文に基づく出題という点で昨年と変更がありません。問2も、同様のテーマに対して異なる観点を持つ論説文を挙げるという点で、変更はありませんでした。ただし、問1ではカンを題材に数学やリサイクル問題を取り上げており、教科横断色が強くなるとともに、難度が上がりました。昨年は比較的取り組みやすかった問1・問2に手間がかかっため、多くの受験生が以後の2問(問3~問7のうちから)に十分な時間を割けなくなったようです。

 県立の共通問題および共通選択問題は、各校の平均点が昨年よりも下がり、かつ得点の分布が広がりそうです。一方、実施校の学力検査(5教科)の受験者平均は概ね400~450点に上がり、受験生の互いの得点が接近しそうです。そのため、差のつきにくい学力検査にかわって、特色検査の得点差が合格・不合格に大きく影響しそうです。

 神奈川全県模試では、神奈川県入試のこのような出題傾向をふまえ、思考力、判断力、表現力を問う問題だけではなく、基礎・基本となる知識を問う問題も出題していきます。ただし、大幅に易化した教科については、神奈川県が難度を修正してくる可能性があります。問題を安易に易しくすることなく、結果として受験(勉強)して良かったと思っていただける問題を作成していきたいと思います。

 特色検査対策模試では、深い思考を問う問題を中心とし、5教科の枠にはまらない出題に対応できる力がつくような出題をしていきます。新傾向の問4のような問題に関しても、複数の回に反映させていく予定です。また、特色検査対策模試の判定方法や帳票もより分かり易いものへと改善していく予定です。

 来年春の第一志望校の合格に向け、是非、神奈川全県模試をご利用ください。

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